昨日は生月小学校5年生の授業「食育ワークショップ」に黒毛和牛繁殖生産農家として 呼ばれ、プチ講師をしに行ってきました。
この平戸食育ワークショップは生産者と、その生産者が生産している食材を使ってシェフが料理を作ってくれてその場で食べながら、料理した際にでる生ゴミを再利用する という食の一環を学べるものです。
昨年も6年生のクラスに呼んでいただいて話をしました。
今年も声をかけていただいた際、目新しいネタを…と思ったのですが、スライド作成担当の私に時間が無く去年作ったスライドを利用することにしました。
お話のメインは「金次郎物語」。
あまり詳しく話すと来年から使えなくなりそうなので(笑)大まかに紹介します。
7年前の春。うちの牧場にある1頭の子牛が産まれました。
黒毛和牛の子牛は産まれたときは薄茶色か灰色がかった色をしていますが、その子牛は薄い茶色だったのです。
私には金色に見えましたね、ピッカピカの金色に
当時はとても珍しくて、いろんな人が噂を聞きつけて見学に来ました。
「気持ち悪い…」という表情をしながらね(苦笑)
この毛の色の違いがどう肉質に影響するのか、異常があるのかないのか獣医もわからないと言いました。
こういう牛が産まれたことで、繁殖地として盛んなこの地域の評判にケチがつくのではないか…などいろいろなことが頭をよぎりました。
(いっそのこと産まれなかったことに…)
でもね、閉鎖的な畜産業界の体質を感じていた私はそれを逆手に取ることにしました。
まずはホームページにて紹介し、地元新聞にも売り込みました。
案の定「あまり目立ったことはしない方が。」という苦言も牧場主に来たようです。
でも私の耳には直接入らなかったので、知るもんかぃ(笑)
言いたいことがあるなら直接私に言ってきな!
そんな心境でしたね(笑)
みんな怯えていたんだと思います。
「金次郎」と名付けたこの牛のもつ影響に。
なにが怯えさせるのか。
それはこの牛が持つ毛の色が肉質に影響あるのかどうか。
食肉として利用できるのかどうか。
それがわからなかったからです。
ならそれがわかれば、なんの不安もないじゃん。
その結果次第で、私たちのすべきことが決まる。
ってなことで、知り合いの獣医や専門機関、遺伝学博士の友人などいろいろな人に聞きまくりました。
いろんな意見をいただいた中で、共通していたものは
「問題ない」
ということでした。
この毛色がでる遺伝子もわかっており、その遺伝子を持っている種雄牛もわかっている。
また、毛色を左右する遺伝子と肉質との関係は認められていなく、よって研究もされていないということでした。
ただ、黒毛和牛として登録はできないということでした。
毛色は黒っていうのが条件の1つだから。
よってセリに出すときは無登録になるだろうということでした。
なぁんだ〜
「普通と違う」というだけで、何の根拠もなくみんな気味悪がっていただけなんじゃん
なら私たちのすることはただ一つ。
胸を張って育て上げるのみ
セリに出すときに無登録になるため、購買者が
「どこぞの馬(牛)の骨の血が混ざっているのかわからん」
という不安を抱かぬよう、黒毛和種の子という科学的証明をするためにDNA鑑定をし、証明書も作ってもらいました。
この牛を守るために、ここまでする義務があると思ったから。
この金次郎の出荷の日は最低最悪の日で、大人になってから号泣したのはこの日が最初で最後かもしれません。
でもたまたま近くの肥育センターが金次郎を買ってくれて、ちょくちょく会いに行くことができました。
体はデカくても人懐っこさは変わらずに、私たちが会いに行けば
「撫でれ」
とすり寄ってきます。
本当に可愛い牛でしたねぇ。
それから20ヶ月後。
金次郎が食肉センターに運ばれたと連絡が来ました。
今はもう物理的には存在しない金次郎。
誰かの家の食卓にあがり、誰かの命に代わった金次郎。
でもこうして7年経った今でも金次郎を思い出しながらみんなの前で話すと、金次郎は生きているんだなぁと感じざるを得ません。
そのあと口蹄疫に少しふれながら、いずれ自分の牛たちに死が来ると知っていながら愛情を持って育てている畜産農家が、なぜ病気で殺されていく牛をみて胸が張り裂けそうなほど辛いのか。という話をさせてもらいました。
こんな話を目を真っ赤にして聞いてくれた子どもたち。
その後にシェフが作ってくれた和牛肉を使った料理(マカロニのミートグラタン、平戸産野菜のサラダ、和牛ミートローフ)がでてきました。
うちの牧場の話が少し重かったので心配していましたが、みんなバクバク美味しそうに食べていました
うんうん、そうでなくっちゃ
「可哀想だからお肉を食べられなくなっちゃった…」
それは違うの。
みんなに美味しく楽しく大事に味わって食べてもらうために、命ある頃の牛の話をしたのだから
平戸の洋風小料理「紺や亭」レストランシェフの腕が素晴らしいこともあり、参加した保護者や私たちもバクバク頂きました。
みんな美味しい料理は大好きでも、その前と後のことにはなかなか興味を持ちません。
どんなに綺麗な料理にも、必ず生ゴミがでます。
その生ゴミにEM菌を使って力ある土に戻し、そこから元気ある野菜を育てるお話を環境・食育アドバイザーの先生にしていただきました。
頭の中もお腹も一杯になった非常に有意義な食育ワークショップでした。
今回お招きいただいて、本当にありがとうございました!
後で子ども達が書いてくれる感想が楽しみです